2026年7月から、Microsoft 365 の法人向けライセンスが順次値上げされる方針が示されています。Business Standard・E3・E5 など主要プランの改定に加え、SharePoint Online 単体プランの提供終了も2026年中に控えており、「これまでの組み方」のままだと年間コストが10〜20%増える ケースが出てきます。
本記事では、値上げ前にやっておくべきライセンス再構築の手順を 「棚卸し → 統合 → 自動化」 の3ステップで整理しました。中小企業の情シス・経営者が「7月までに何をしておくべきか」を、判断材料込みで判断できる構成です。
課題の現状 — 中小企業の M365 コストが膨らむ3つの構造
最近、中小企業の M365 アセスメントをすると、ほぼ全社で次の3つが見つかります。
| 構造的な無駄 | 中身 | |—|—| | ① 退職者ライセンスの停止漏れ | 月数千〜数万円が毎月垂れ流し | | ② プラン乱立 | Business Basic / Standard / Premium が混在し、価格メリットが消える | | ③ 単体プランの放置 | SharePoint 単体・Exchange 単体など、廃止予定の小型プランが残っている |
特に 「SharePoint Online 単体プラン」は2026年中に提供終了 が告知されています。残しておくと、いずれ強制移行になるため、値上げと同タイミングで整理するのが合理的です。
解決の方針 — 「棚卸し → 統合 → 自動化」の3ステップ
最適化は、難しいことから始めず、次の順序でやるのが一番効きます。
- ライセンス棚卸し :PowerShell で現状を JSON / CSV に出す
- プラン統合 :Business Basic / Standard / Premium のどれかに寄せる
- 退職者処理の自動化 :Entra ID のグループとライフサイクルで止める
値上げ前後の試算(社員30名想定)
| プラン | 現行月額(税抜) | 改定後想定 | 30名 × 12ヶ月の差分 | |—|—|—|—| | Business Basic | 約 750円 | +10% | 年 +2.7万円 | | Business Standard | 約 1,560円 | +10% | 年 +5.6万円 | | Business Premium | 約 2,750円 | +10% | 年 +9.9万円 |
仮に Standard を Basic に1人分でも降格できれば、その差で値上げ分を相殺できます。「全員が同じプランである必要はない」 という発想がまず大事です。
実装 — 30名規模を想定した手順
3-1. ライセンス棚卸し(PowerShell)
Microsoft Graph PowerShell でアカウントとライセンスの一覧を CSV 化します。
Connect-MgGraph -Scopes "User.Read.All","Directory.Read.All"
Get-MgUser -All -Property DisplayName,Mail,AccountEnabled,AssignedLicenses |
Select-Object DisplayName, Mail, AccountEnabled, @{
Name = "Licenses"
Expression = { ($_.AssignedLicenses.SkuId -join ";") }
} |
Export-Csv "m365_license_audit.csv" -NoTypeInformation -Encoding UTF8
このスクリプトを 3ヶ月に1回 実行する運用にすると、退職者ライセンスの放置を構造的に防げます。
3-2. プラン統合の判断軸
ライセンスを統合するときは、次の3つの軸で各社員を分類します。
| 業務タイプ | 推奨プラン | 判断理由 | |—|—|—| | メール・Office Web のみ | Business Basic | Web 版で十分なら最安 | | デスクトップ版 Office 必須 | Business Standard | 営業・経理など | | 社外との機密データやり取り | Business Premium | Defender・Intune 含む |
中小企業でよく出る誤解が「経営者は Premium にしておくべき」というもの。実際には、情報セキュリティ責任を負う人だけ Premium、それ以外は Basic / Standard が正解です。Premium の真価は Intune と Defender にあり、それを管理する人がいないなら宝の持ち腐れになります。
3-3. 退職者処理の自動化
Entra ID(旧 Azure AD)の「ライフサイクルワークフロー」または Power Automate を使って、退職時に次の処理を自動実行します。
[退職日トリガー]
↓
1. アカウント無効化
2. ライセンス剥奪(全SKU)
3. メール転送設定(後任者へ)
4. OneDrive をマネージャーに引き継ぎ
5. Slack / Teams / Salesforce 等の SaaS アカウントも棚卸し
このフローを組んでおくと、退職者1名あたり月1,500〜3,000円の固定費 が確実に止まります。30名規模で年5名退職する想定なら、年間9〜18万円の節約です。
ハマりどころ — 3つの落とし穴
⚠ 注意 1:プラン降格時のデータ保持 Standard から Basic に降格すると、デスクトップ版 Office が使えなくなります。ローカル PC に保存したデータの引き上げを 降格前に やってください。
⚠ 注意 2:SharePoint 単体プランの強制移行 提供終了に伴い Microsoft 側で強制的に Business プランへの統合提案が来ます。値上げと重なるとコスト試算がブレるので、先回りで自社設計を決めておく のが得策です。
⚠ 注意 3:Copilot Credit 統合の影響 2026年11月から AI Builder クレジットが Copilot Credit に統合されます。Power Automate で AI Builder を使っている場合、コスト構造が変わるので、業務自動化の運用設計も併せて見直しが必要です。
効果 — 30名規模の試算例
棚卸し → 統合 → 自動化を一通り終えた場合の、典型的な効果はこのくらいです。
| 項目 | Before | After | 年間差分 | |—|—|—|—| | プラン構成 | Premium 一律 | Basic 12名 / Standard 15名 / Premium 3名 | ▲ 約 65万円 | | 退職者処理漏れ | 平均 1.5ヶ月分滞留 | 即日停止 | ▲ 約 15万円 | | AI Builder 等の従量管理 | 把握なし | 月次ダッシュボード化 | 超過リスク回避 | | 値上げ影響 | +10% | 統合効果で相殺以上 | ±0以下 |
「値上げを機にライセンス設計を見直したら、結果的に年間80万円下がった」という構図は、中小企業でかなり現実的なシナリオです。
まとめ — 値上げを「断捨離のきっかけ」に
Microsoft 365 の値上げは避けられませんが、やるべきことを順序立ててやれば、年間コストはむしろ下げられる ケースが多いです。中小企業ほど「全員一律プラン」になりがちなので、棚卸しの効果が大きく出ます。
「うちの30名で実際いくら下がる?」と気になった方は、お問い合わせ からお気軽にご相談ください。初回ヒアリング(30分・無料)で、現状のライセンス構成・利用実態・予算から、最適なプラン構成と移行スケジュールをご提案します。
