Power Automateで請求書処理や書類の自動チェックにAI Builderを使っている会社に、今すぐ確認してほしい重要な変更があります。2026年11月1日、Power AutomateやPower Appsのライセンスに含まれていた「AI Builderクレジット」が廃止されます。 対処が遅れると、動いていたフローが突然止まります。
本記事では、(1) 何がどう変わるのか、(2) 今やるべき3ステップ、(3) 同時期に使えるようになった「ドキュメント処理エージェント」の活用法まで、中小企業の情シス・経営者向けに具体的に解説します。
11月に何が起きるのか——廃止の全容
Microsoft は2025年11月から段階的にAI Builder のライセンス体系を変更してきました。2026年11月1日が「最終期限」です。
廃止されるもの
Power Apps Premium・Power Automate Premium・Dynamics 365 Finance などのライセンスには、毎月一定量の「AI Builder クレジット」がシード(付属)されていました。このシードクレジットが 2026年11月1日を持って完全廃止 になります。
廃止後の動作: クレジットが尽きたフローは
EntitlementNotAvailableまたはQuotaExceededエラーで停止します。画面には「このEnvironmentのAI Builderクレジットはすべて消費されました」と表示されます。
変わらないもの
- AI Builder add-on(有償の追加購入)を持っている場合: 契約期間中は引き続き利用可能
- 2025年11月1日より前の契約(Enterprise Agreement等): 契約期間中はシードクレジットも有効
今やるべき3ステップ
Step 1: 自社の使用量を確認する
Power Platform 管理センター(admin.powerplatform.microsoft.com)にログインし、リソース → キャパシティ → アドオン を開きます。
確認ポイント:
- AI Builderクレジットの月次消費量(環境ごとに表示)
- 現在どのフロー/アプリがAI Builderを使っているか
- 11月以降に「Copilot Credits」の準備が必要な量
| 確認場所 | 確認内容 | |—|—| | 管理センター > キャパシティ > アドオン | 現在のAI Builderクレジット残高・割り当て | | 管理センター > アナリティクス > Power Automate | フローごとのAI Builder使用状況 |
Step 2: Copilot Credits を手配する
廃止後は「Copilot Credits」が新しい共通通貨になります。Power Automate・Power Apps・Copilot Studio の3製品で共通して使えます。
取得方法は2パターン:
パターンA: プリペイドパック(月次キャパシティ) Microsoft 365管理センターからCopilot Creditsのサブスクリプションを追加購入。環境ごとに割り当て可能。
パターンB: 従量課金(Pay-As-You-Go) Azure サブスクリプションと連携し、使った分だけ課金。月次消費が読みにくい段階では試験的に利用しやすい。
月次消費量の目安:
・フォーム認識(請求書・領収書): 1処理あたり数〜十数クレジット
・テキスト分類・感情分析: 1実行あたり数クレジット
・ドキュメント処理エージェント: 処理複雑度に応じて変動
💡 学び: 消費量は毎月1日にリセットされます。月次ピーク消費量を基準に購入するのが推奨。ロールオーバーはないため、過剰購入は無駄になります。
Step 3: テスト環境で先行切り替えを実施する
本番フローを止めないために、以下の順序で進めます:
- テスト環境にCopilot Creditsを割り当て
- AI Builderを使うフローをテスト環境でコピー実行
- エラーがないことを確認
- 本番環境にCopilot Creditsを割り当て
- 2026年10月中に本番切り替え完了(11月前に余裕を持って)
新機能を活かす——ドキュメント処理エージェント
移行対応と並行して、同時期に使えるようになった「ドキュメント処理エージェント」 を活用すると業務効率が大きく変わります。
何ができるのか
従来のAI Builder「フォーム処理」は、あらかじめ学習させた書類フォーマットだけを処理するものでした。新しい「ドキュメント処理エージェント」はCopilot Studioと統合されており、請求書・契約書・領収書など多様なフォーマットを、追加学習なしに自動で抽出・分類・検証できます。
実装の流れ(概要)
- Copilot Studioでエージェントを作成
- テンプレートから「ドキュメント処理」を選択
- 処理したい書類の種類(請求書、発注書など)を指定
- Power Automate からエージェントをトリガー
- メール添付ファイルを受信 → エージェントにPDFを渡す
- エージェントが抽出した構造化データ(取引先名、金額、日付など)を受け取る
- 抽出結果をSharePoint / Excel / kintone に書き込む
- Dataverse や SharePoint リストへの書き込みはコネクタで1ステップ
【Before】
メール受信 → 担当者が手動で請求書を開く → Excelに転記(月20時間)
【After】
メール受信 → Power Automate が自動起動 → ドキュメント処理エージェントが抽出
→ SharePointリストに自動書き込み → 担当者は確認のみ(月2〜3時間)
⚠ 注意: ドキュメント処理エージェントはCopilot Creditsを消費します。従来のAI Builderクレジットとは別途消費されるため、Copilot Credits への移行後にまとめて試せます。
ハマりどころ——よくある移行の落とし穴
落とし穴1: 「まだクレジットが残っているから大丈夫」
管理センターで残クレジットが表示されていても、シードクレジットは 2026年11月1日に強制廃止 されます。残量に関係なく使えなくなるため、早めの手配が必須です。
落とし穴2: 環境ごとの割り当て忘れ
Copilot Creditsをテナント(組織全体)レベルで購入しても、環境への割り当てが必要です。割り当てなしだと各フローで「クレジット未割り当て」エラーが出ます。
対処: 管理センター > リソース > キャパシティ > アドオン → 環境を選択して割り当て
落とし穴3: 消費量の読み違い
シードクレジット時代は「使い放題に近い感覚」だった企業が、移行後に想定外の消費量に驚くケースがあります。本番切り替え前に1〜2週間のテスト環境で消費量を実測することを強く推奨します。
落とし穴4: AI Builder add-on と Copilot Credits の混在
両方を持っている環境では、AI Builder クレジットを先に消費し、枯渇後にCopilot Creditsを消費する順序になります。消費計算は最大5日遅れることがあるため、一時的なオーバーが発生しても課金されず、翌月頭にリセットされます(ただし超過分は請求対象外であり保証もなし)。
移行前後の効果比較
| 項目 | 移行前(シードクレジット) | 移行後(Copilot Credits) | |—|—|—| | 対象製品 | Power Automate・Power Appsのみ | Power Automate・Power Apps・Copilot Studio の3製品共通 | | 月次消費のリセット | ✅ 毎月1日 | ✅ 毎月1日 | | ロールオーバー | ❌ なし | ❌ なし | | 消費上限の管理 | 管理センターで確認 | 管理センター+詳細ダッシュボード(2026 Release Wave 1で強化) | | 使えるAI機能 | AI Builderのみ | AI Builder + ドキュメント処理エージェント + Copilot Studio のAI機能 | | 新機能への対応 | ❌ 新規購入不可(既存のみ) | ✅ 新機能もカバー |
まとめ
2026年11月1日のAI Builderクレジット廃止は、Power Automateを業務自動化に使っている中小企業にとって無視できない変更です。今すぐ3つのアクションを取ってください。
- 管理センターで現在の消費量を確認する(10分で完了)
- Copilot Creditsの購入方法を決める(プリペイド or 従量課金)
- 10月末までに本番切り替えを完了させる
移行のついでに、ドキュメント処理エージェントを試せば、請求書・発注書処理を大幅に自動化できます。Copilot Creditsへの移行を「負担」ではなく「AI機能を一本化して広げるチャンス」と捉えるのが、費用対効果を最大化するコツです。
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