Power Automateで帳票OCRや文書分類を自動化している業務が、2026年11月1日以降に突然停止するリスクがあります。Microsoftは2025年秋にAI Builderクレジットの段階的廃止を発表しており、特に「シード型クレジット」と呼ばれるPower Automate Premiumなどのライセンスに付属するクレジットが2026年11月1日をもってすべて削除されます。
「うちはまだ大丈夫だろう」と思っているほど危険です。本記事では、影響範囲の確認から「Copilot Credits」への移行手順まで、情シス担当者・DX推進者が今すぐ取り組むべき内容を4ステップで解説します。
AI Builderクレジット廃止とは? まず状況を正確に把握する
AI Builderは、Power AutomateやPower Appsのフロー内でOCR・テキスト分類・オブジェクト検出などのAI処理を実行するための機能です。利用には「AI Builderクレジット」と呼ばれる消費枠が必要で、これまではライセンスに付属するかたちで提供されていました。
Microsoftはこのクレジット体系を段階的に廃止し、新たに「Copilot Credits(Copilot Studioクレジット)」へ移行するロードマップを発表しています。
廃止スケジュール
| 日付 | 変更内容 | 影響対象 | |—|—|—| | 2025年11月1日 | AI Builderアドオンの新規販売終了 | 新規顧客は購入不可 | | 2026年11月1日 | シード型クレジットの完全削除 | 既存のPower Automate Premium等の付属クレジット | | 2026年11月1日以降 | AI Builderアドオン契約期間終了後は更新不可 | 既存アドオン顧客 |
特に注意が必要なのは「シード型クレジット」です。 Power Automate Premiumには1ユーザーあたり月5,000クレジット、Power Apps Premiumには500クレジットが付属していましたが、これらが2026年11月1日を境にゼロになります。この廃止は既存契約中の顧客を含むすべての組織に適用されます(ただし2025年11月1日以前に開始した企業契約は契約期間中は維持)。
Microsoft公式ドキュメント「End of AI Builder credits」より: “After November 1, 2026, these seeded credits will be removed for all new and existing customers, including those with an Enterprise Agreement.”
どの業務が止まる? 影響範囲を確認する
AI Builderクレジットを消費するPower Automateフローは、クレジットがなくなると実行時にエラーで停止します。自動変換やフォールバックはありません。
AI Builderクレジットを使う主な機能
- 帳票処理(Document Processing): 請求書・発注書・領収書のOCR読み取り
- 名刺読み取り(Business Card Reader): 名刺情報の自動取り込み
- テキスト認識(Text Recognition): 画像内の文字抽出
- 感情分析・キーフレーズ抽出: メールやレビューの自動分類
- AI プロンプト(Prompt Builder): Power Automate内でのLLM呼び出し
消費クレジット数の目安(公式レートより)
| 処理 | 消費クレジット/回 | |—|—| | 帳票処理(Document Processing) | 32クレジット | | テキスト認識(OCR) | 1クレジット | | 感情分析 | 1クレジット | | AIプロンプト(GPT/Claude呼び出し) | 処理量に応じて変動 |
月に100枚の請求書をOCR処理している場合、月3,200クレジットを消費しています。Power Automate Premium 1ユーザー分の5,000クレジットで賄えていたとしても、2026年11月以降はこれが突然ゼロになります。
移行手順 4ステップ
Step 1: 現在のAI Builder利用状況を確認する
まずどのフローがどれだけクレジットを消費しているかを把握します。
Power Platform管理センターでの確認手順:
- Power Platform管理センター にサインイン
- 左メニューから「ライセンス」→「容量アドオン」を選択
- 「サマリー」タブで現在の消費量を確認
- 詳細は「AI Builder消費レポート」で環境・日付・ユーザー別に確認可能
確認すべきポイント:
- 月間消費クレジット数(現在のシード分で賄えているか)
- 使用中のAI Builder機能の種類
- どの環境(本番/開発/テスト)でどれだけ使っているか
管理センター > ライセンス > 容量アドオン >
「AI Builder消費レポート」で日次消費量を取得
Step 2: Copilot Creditsの費用試算と購入検討
2026年11月以降にAI Builder機能を継続するには、Copilot Credits(Copilot Studioクレジット)の購入が必要です。
重要な注意点: AI BuilderクレジットとCopilot Creditsの自動変換はありません。 既存のシード型クレジットは単純に消えるだけです。
Copilot Creditsの購入方法:
- Microsoft 365管理センターまたは担当リセラー経由で購入
- 25,000 Copilot Credits単位でのアドオン販売(2026年時点)
- AI Builderアドオン(既存)を保有している場合は2026年11月まで併用可能
費用試算の考え方:
- Step 1で確認した月間AI Builderクレジット消費量を把握
- 公式の「AI Builderケイパビリティレートテーブル」でCopilot Credits換算値を確認
- 年間のCopilot Credits必要量を算出し、購入アドオン数を決定
AIBuilderの帳票処理(Document Processing)はCopilot CreditsのStandardティアに相当。換算レートはMicrosoft公式の「capability rate table」を参照のこと。
Step 3: 環境へのCopilot Credits割り当て
Copilot Creditsを購入しただけでは有効になりません。環境ごとへの割り当てが必要です。
割り当て手順:
- Power Platform管理センターにサインイン
- 「ライセンス」→「容量アドオン」→「環境に割り当て」を選択
- 対象環境(本番環境を優先)を選択し、Copilot Credits数を入力
- 「保存」で反映(即時反映、リスタート不要)
複数環境がある場合の注意点:
- 本番環境・開発環境・テスト環境がある場合、それぞれに個別割り当てが必要
- 未割り当てのCopilot Creditsは「テナントレベル」で保持されるが、環境内のフローには使われない
- 割り当て超過があった場合の自動フォールバックはない
Step 4: 既存フローのテストと動作確認
移行後は必ず既存フローの動作確認を行います。
チェックリスト:
- [ ] 帳票OCRフローを手動実行し、正常にクレジット消費されているか確認
- [ ] Power Platform管理センターのCopilot Credits消費量に反映されているか確認
- [ ] テスト環境でのフロー実行→本番への適用という順番で検証
- [ ] エラー通知フロー(失敗時にメール/Teams通知)を設定しておく
フロー実行後: 管理センター > 容量アドオン >
「Copilot Credits」の消費量が増えていればOK
よくあるハマりどころ
ハマりポイント1: 「自動変換される」という誤解
最も多い誤解です。AI BuilderクレジットからCopilot Creditsへの自動変換は行われません。 2026年11月1日にシード型クレジットが削除された後、Copilot Creditsを購入・割り当てていなければフローは即座にエラーになります。
ハマりポイント2: 「テナントへの割り当てと環境への割り当て」の混同
Copilot Creditsを購入した後、テナントレベルでは割り当て済みと表示されても、環境レベルへの割り当てを忘れるとフローは動きません。特にサンドボックス環境や開発環境が複数ある組織で起きやすいミスです。
ハマりポイント3: 消費量の計算ズレ
AI Builderクレジットの消費カウントは最大5日遅延する仕様です。月末に駆け込みで確認すると実際の消費量とズレが生じ、想定外のクレジット不足になることがあります。月初に前月の消費レポートを定期確認する運用を設定しておくことを推奨します。
ハマりポイント4: Copilot StudioとPower Automate、どちらのコンテキストで消費されるか
Copilot Studio内でAI Builder機能を使う場合は常にCopilot Creditsが消費されます。Power AppsやPower Automateのコンテキストでは、AI Builderクレジットを先に消費し、枯渇した場合にCopilot Creditsへフォールバックします。2026年11月以降はAI Builderクレジットがなくなるため、すべてCopilot Credits消費になります。
まとめ: 2026年11月までのアクションプラン
Before / After
| 項目 | 廃止前(現在) | 廃止後(2026年11月〜) | |—|—|—| | Power Automate Premiumのクレジット | 5,000クレジット/ユーザー/月(付属) | 0(完全削除) | | OCR・AI分類の継続方法 | 既存クレジットで自動消費 | Copilot Creditsを別途購入・割り当て | | 未対応時の影響 | — | フローが実行エラーで停止 |
今すぐ取り組むロードマップ
| タイミング | 対応内容 | |—|—| | 今すぐ(2026年7月) | Step 1: Power Platform管理センターで消費量確認 | | 2026年8〜9月 | Step 2: 必要なCopilot Credits数を試算、購入手続き | | 2026年10月 | Step 3: 環境へのCopilot Credits割り当てと事前テスト | | 2026年10月末 | Step 4: 本番フローの動作確認・エラー通知設定 | | 2026年11月1日 | AI Builderシードクレジット廃止(Copilot Creditsで継続) |
まとめ
AI Builderクレジットの廃止は、Power Automateを日常業務に組み込んでいる中小企業ほど影響が大きいです。「帳票OCRが突然止まった」という事態になる前に、現在の利用状況確認と移行計画の策定を今月中に着手することを強くお勧めします。
特に複数のPower Automate Premiumライセンスを保有している場合、現在は複数ユーザー分のシードクレジットが合算されていますが、2026年11月以降はすべてゼロになります。早め早めの対応が業務継続リスクを防ぎます。
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